ニューズレター
利用発明の保護
台湾特許法第29条第1項によれば、「他人の発明又は実用新案を利用して再発明をした者は、発明特許を出願することができる」。また、同法第80条第1項によると、「第29条の再発明の特許権者は、原特許権者の同意を得なければ、その発明を実施することができない」。しかし、第80条第1項の規定に違反する行為に、特許法の刑罰規定が適用するかどうににつき、明文規定はない。
この点について、台湾台中地方裁判所は1998年自更字第35号刑事判決において、次のとおり判示した。
特許法が保護しようとする対象は、「新しい産業技術」である。したがって、特許法が処罰しようとする対象は、特許権を受けている「新しい産業技術」を模倣した者である。本件に照らしてみると、本件被告人が製造した物は、被告人の実用新案権に基づいて製造した物である。被告人の実用新案権は自訴人(原告)の実用新案権を改良したものではあるが、かような改良行為は、産業技術の経済的価値を増進するものである故、奨励されるべきであり、そのために特許法は「再発明」という創作態様を認めている。しかしながら、再発明は他人の特許の主要技術内容を利用しているため、原特許権者の権益を尊重し、かつこれを保護するために、特許法は、再発明の特許権者が原特許権者の同意を得ないとき、その発明を実施することができないと規定している。これは、実用新案権を受けている他人の「新しい産業技術」を模倣する者を処罰する特許法第125条の目的と異なる。被告人は被告人が所有する実用新案権に基づいて係争製品を生産している以上、主観的には実用新案権を受けている自訴人(原告)の産業技術を模倣する故意がない。したがって、被告人の実用新案権は自訴人(原告)の実用新案の再発明であるが、特許法第125条が処罰しようとする対象に該当しない。被告人が自訴人(原告)の同意を得ずに無断で原告の実用新案権を実施し、特許法第80条第1項に違反して原告に損害を被らせた点については、自訴人(原告)は、別途民事訴訟法により救済を求めることができる。