ニューズレター
外国地名の商標登録の可否
地名を商標として出願登録することができるか否かについては依然として実務上かなり議論がある。この問題の主たる争点は、2003年11月28日に施行された新改正商標法の第23条第1項第11号(旧商標法第37条第6号)の明文規定にあり、同規定によれば、公衆にその商品の性質、品質又は産地を誤認・誤信させる虞のある商標図案は出願登録することはできない。経済部智慧財産局は、近年来、大部分の案例について、地名を商標とする登録出願は公衆に商品の産地を誤認・誤信させる虞があるとして、その登録を許可していなかった。
しかしながら、台北高等行政裁判所91年(西暦2002年)度訴字第795判決は「スイス」のフランス語の地名である「SUISSE」を商標として登録出願した案例に対して、公衆にその商品の産地を誤認・誤信させる虞はないと認めている。前記判決は「商標登録は属地的な効力を有しているにすぎず、前期条項の立法目的は、商標登録効力の及ぶ地域内における公衆がその商品の性質、品質又は産地を誤認・誤信しないよう保護するものにすぎない。したがって、ここでいう『公衆』とは我が国国内の公衆を指す。我が国の国民が受ける外国語教育は主に英語であり、フランス語については、我が国で当該言語を解する者は極めて少ない。我が国の一般消費者が知っている『スイス』の外国語はほとんど『SWISS』又は『SWITZERLAND』であり、『SUISSE』がスイスの意味であると認識しようがなく、自ずと『SUISSE』を商標とすることが我が国国内の公衆にその商品の生産地がスイスであると誤認誤信させ得るとは考えにくい」と判示している。
ギリシャの首都アテネが所在する州の名称「Attique」を商標とすることについて商標無効審判請求が提出された案例に対し、台北高等行政裁判所90年(西暦2001年)度訴字第3896号判決は前述の台北高等行政裁判所判決と類似の見解を示し、「『Attique』は我が国で一般によく知られている地理名称ではないので商標とすることができる」と判示した。該案件は商標無効審判請求者によって最高行政裁判所に上訴され、最高行政裁判所92年(西暦2003年)度判字第907号判決は、本件商標登録時の商標法第37条第6号に規定されている「その商品を誤認誤信させる『産地』」とは昔からその製品を盛んに生産している地域に限らねばならないと明確に規定されてはいないようである、と指摘したうえで、「我が国はWTOに加盟し、また、近年来、我が国の国民による欧米各国への渡航機会は増えており、『Attique』がギリシャのアテネを中心とする地名である以上、我が国の国民の知悉し得るものでないか否か、一般消費者に該商品の産地について混同・誤認させる虞がないか否かについては、詳細に調査検討する必要がある」と判示した。最高行政裁判所は原審判決を破棄し、本案件を台北高等行政裁判所に差し戻し、詳細に調査を行うよう命じた。
台北高等行政裁判所92年(2003年)度訴更一字第84号判決は、最高行政裁判所の破棄差し戻し判決の主旨に基づいて、「『Attique』は本件登録出願商標の指定商品を盛んに生産してはいないが、現在我が国の国民による欧米への旅行観光の風潮は盛んであり、『Attique』は自ずと我が国の国民が知悉し得るものであるため、該商標の表彰する商品がギリシャ又はギリシャのAttiqueからの製品であると一般消費者に誤認・誤信させ購買せしめる虞があるため、本件商標登録時の商標法第37条第6号の規定に違反している」と判示し、本件商標無効審判請求事件について無効成立の処分を下すよう智慧財産局に直接命じた。
最高行政裁判所の見解から推論し、外国の地名を商標とする登録出願につき、英語以外のその他の外国語の地名であれば比較的容易に登録許可を受けることができるということは決してなく、我が国の一般消費者がその商品の産地を誤認・誤信する虞があるか否かについては依然として各項の要因を考慮したうえで総合的に判断しなければならない。