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タミフルの特許技術に強制実施権の供与を認める



経済部智慧財産局(台湾特許庁)は2005年12月、行政処分により行政院衛生署に鳥インフルエンザの予防及び治療医薬品の特許技術の強制ライセンシングを許可し、これは世界ではじめて、H5N1型鳥インフルエンザに対抗するために条件付きで特許強制ライセンシング方式により該薬品の製造技術を取得したケースとなった。該案件は、衛生署が米Gilead Sciences社を相手人として、該相手人が所有する発明特許第129988号の実施許可を求めたものである。これは該特許の専属ライセンシーであるスイスF. Hoffmann-La Roche社の権益に関わるため、F. Hoffmann-La Roche社は参加人の名義で審査過程に参与した。

智慧財産局の処分書の主な内容は以下の通りである。

1.申請人に発明特許第129988号の実施を許可する。実施期間は実施許可の日から2007年12月31日までとする。

2.特別に実施が許可され製造された製品は、国内 の防疫にのみ供される。

3.実施が特別に許可されるのは、相手人若しくはライセンシーが申請人に「タミフル」カプセル若しくはその原料を適時供給できない場合に限るものとし、かかる状況においてのみ申請人は該特許により製造した製品を市場に出すことができる。

4.実施が特別に許可されている期間、相手人若し くはそのライセンシーと申請人がライセンシングの合意に達した場合、智慧財産局は該特別許可を廃止することができる。

5.申請人は法に則り相手人に適切な補償金を給付しなければならない。

特許法第76条第1項には「国家の緊急事態に対応するため、または公益を増進するための非営利目的の使用、若しくは申請者が合理的な商業条件を提示したにもかかわらず、相当期間内に実施許諾について協議できなかった場合、特許主務官庁は請求により、該申請者に特許権の強制実施を許可することができる。その実施は国内市場の需要に供給することを主としなければならない」と規定されている。

衛生署の特許強制ライセンシング申請に対し、相手人及び参加人は手続き上においても実質的にも反対意見を提出した。政府機関である衛生署が本案件の申請人として適格であるか否かについて、智慧財産局は「衛生署は国内最高の衛生主務機関であり、国民の健康維持に責任を負う」と認めた。該署は、鳥インフルエンザ予防のために係争特許を用いる必要性に基づいて、特許法第76条の「国家の緊急事態」に関する規定に従い、智慧財産局に対し特別許可を申請し、該申請は審査の結果、適当であると判断された。したがって、本案件の申請者即ち衛生署は、特許強制ライセンシング申請の申請者として適格であると認められた。

本案件の申請時における台湾の鳥インフルエンザの流行状況が「国家の緊急事態」に該当するか否か、智慧財産局は「公衆衛生に関するドーハ宣言」(「與公共衛生有關之杜哈宣言」)」第5段第c項に基づき、国家の緊急事態については、WTO各加盟国が自らの客観的状態に基づき自らこれを決定することができる、としている。この宣言は、各国それぞれの経済発展程度、人・貨物の国際的な往来への依存度、防疫に必要な各種インフラの整備程度などの客観的条件によって、どのような状況が該国家の「国家の緊急事態」を構成するかを各国がそれぞれ認定することができる、とするものである。以上の説明によれば、どのような状況が「国家の緊急事態」を構成するかについては、国家最高の衛生主務機関(本案件における申請人)が認定の権限を有する。

智慧財産局は、衛生署が、鳥インフルエンザが日増しに勢力を拡大し台湾に感染が広がる緊急事態であると認めたことを肯定し、特別許可の法定要件を満たしていると認める一方で、「特許制度の本来の趣旨は、発明者や創作者にその研究成果を開示することを奨励し、一定期間の排他権を与え、特許権者が特許期間において法律によって与えられる製造や販売、販売のための契約、使用、上記目的のために輸入する権利によって、その研究に要した労力や資本に報いることにあり、もし恣意的にその権益を損ない商業利益に損害をもたらすのであれば、特許制度本来の研究保護の目的を達することができないのみならず、特許権者の関係国における特許出願や投資に対する意欲にも影響を与えることになる」と認めた。そのうえで智慧財産局は、特別許可により生産した薬品は、相手人若しくはライセンシーが「タミフル」カプセル若しくはその原料を適時供給できない時のみ、市場に出し、使用することができるとし、特許権者に適当な補償金を給付するよう命じた。これは相手人若しくは参加人が本来有する可能性のある商業利益についても補償が得られるよう配慮したものである。
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