ニューズレター
外国語の特許明細書での出願日取得に関する実務
我が国は特許出願に対し「絶対的新規性」及び「先出願原則」を採用しており、優先権の主張も特許出願日に声明を提出しなければならず、したがって、「出願日の取得」は特許出願にとって非常に重要である。専利法第25条には「発明特許出願時、特許出願権者が願書、明細書、必要な図面を備えて、出願を提出しなければならず、発明特許出願は、願書、明細書及び必要な図面が全て揃った日を出願日とする」旨規定されている。また、同条第4項には「出願人がまず発明特許明細書及び必要な図面を外国語版で提出した場合、それが智慧財産局の指定する期間内に中国語版を補充するのであれば、該外国語版が提出された日が出願日と認定される。指定された期間内に補正しなかった場合、出願を受理しない。但し、処分前に補正した場合、補正した日を出願日とする」旨規定されている。智慧財産局の長年の審理実務によれば、出願人の提出した発明特許明細書の外国語版に「発明名称」が記載されていない場合、該局が、これを理由に、該外国語版が書式どおりでないとして、該外国語版提出日を「出願日」と認定することを拒絶することはこれまでなかった。
智慧財産局が2005年5月20日に施行した「程序審査基準」(「手続き審査基準」)によれば、外国語明細書には発明名称、発明の説明及び特許請求の範囲を記載しなければならず、これらの記載がなければ、該外国語明細書を提出した日を出願日とする認定を受けることはできない。前記「手続き審査基準」の施行後、智慧財産局は関連案件に対し、「外国語明細書に発明名称が記載されていない」ことを理由に、「出願日を遅らせる」処分を作成することができ、その結果、関連する出願人の案件の出願日が遅らされ、甚だしきに至っては優先権喪失という重大な結果を生じることになる。
我が国の特許法制では、これまでずっと、特許出願人が特許出願時にひとまず先に外国語明細書を提出し且つ指定された期間内に中国語明細書を補正することを認めており、その目的は、特許出願人に理に適ったメカニズムを提供することにほかならず、「外国語版が同一発明を完全に開示する」という前提において、出願人に外国語版提出に基づいた出願日取得を認めてきた。但し、専利法には明文規定が置かれていないという情況のもと、智慧財産局は「外国語の明細書に発明名称が記載されていない」ことを理由に、行政命令(即ち前記「手続き審査基準」)を以って、特許出願人が法により享有できる「外国語明細書でひとまず先に出願日を取得する」権利を剥奪することは、合法性において、疑義がある。とりわけ、各国の特許法制及び実務を参照すると、特許明細書は必ずしも「発明名称の明記」をその書式要件としてはいない。アメリカを例に挙げてみると、特許出願人が出願時に提出する明細書に詳細な発明の説明及び特許請求の範囲が記載されてさえいれば、出願日を取得することができ、願書に発明名称が既に明記されていれば、出願人は別途、明細書上に発明名称を記載する必要はない。また、ヨーロッパの実務によれば、特許明細書に発明名称が記載されていない場合、出願人は補正することができ、並びにそれは決して出願日の認定に影響しない。
智慧財産局が「外国語明細書に発明名称が記載されていない」ことを理由に「出願日を遅らせる」処分を下した案件に対し、出願人は前記処分を不服として、訴願手続きを提起したことがある。智慧財産局は、該これらの訴願手続きにおいて答弁を提出した際、「発明名称を記載していない外国語明細書に、出願日取得を許可するのであれば、外国人出願人に、国内出願人より優位な、平等ではない待遇を与えることになる」と述べている。事実、我が国の出願人が外国で最初に特許出願を提出する場合にも同じような情況が見られ、智慧財産局の原審査の見解によれば、我が国の出願人もおそらくそのために出願日を繰り延べされる処分を受け、不利な結果となっている可能性がある。
当所が代理してきたもののうち、同様の問題に遭遇した数多くの特許出願案件に対し、当所は2006年前半、我が国の専利法の規定及び関連する国外法制実務の両者に配慮するよう智慧財産局に提案し続けるとともに、関連行政救済手続きを提出してきた。智慧財産局は、その後、関連手続き審査基準の改正を決定して、「明細書の外国語版に発明名称が記載されていなかった場合、該外国語版明細書の提出日を出願日として認定することはできない」旨の規定を削除し、並びに関連特許案件について自ら原処分を取り消し、原出願日の認定を回復させた。智慧財産局が我が国の法制規定及び国際間の関連実務、双方に配慮したことは評価に値し、我が国の知的財産権の保護環境を向上させ且つ国際実務と歩調を合わせることに対しても大きな助けとなった。