ニューズレター
特許権侵害の損害賠償は特許権者による特許の実施を必要としない
特許権者がまだ特許を実施していない場合、特許権侵害の損害賠償を請求できるか否かは、実務上極めて紛争性を有する問題である。「専利法」(※日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)第79条には「発明特許権者は、特許に係る物品又はその包装に特許証の番号を表示しなければならず、並びに、実施権者又は強制実施権者にも当該特許証番号の表示を要求することができる。特許証番号を表示しなかった場合、損害賠償を請求することができない」旨規定されている。「専利法」第79条から、もし特許をまだ実施しておらず、並びに特許に係る物品又はその包裝に特許証書番号を表示していなかった場合、損害賠償を請求することはできないようである、と推論される。しかし、「専利法」第79条の但書には、「但し、特許権侵害者が、当該物品が特許に係るものであることを明らかに知っていた場合、又はそれを知り得ることを証明できる事実がある場合は、この限りでない」と規定されており、当該規定は、特許権者が特許を実施していなくても、損害賠償を請求できる旨規定する例外規定であるようだ。
最高裁判所は2007年1月4日付2007年度台上字第17号民事判決において、「特許権侵害の結果、特許権者が特許権を実施することによって通常得ることのできる利益が減少しているため、特許権者が製造、販売していなかった、他人に製造、販売する権利を授けていなかったことを以って、損害がなかったと言うことはできず、特許権者は依然として損害賠償を請求することができる。賠償額については、特許権者が当該金額を証明することができない場合又は証明が明らかに非常に困難である場合には、裁判所が民事訴訟法第222条第2項の規定に依り、全ての情況を斟酌し、そこで得た心証に依って当該金額を定める。」との見解を示した。