ニューズレター
民事訴訟法の支払い命令に関する新たな改正条文
【設問】 |
ある銀行がその債務人に対し、ある債権の返還請求権がまもなく時効にかかるため、銀行は最も費用のかからない方法で執行名義を取得することを望み、債務人に対し支払い命令を出すよう裁判所に申し立てた。裁判所は支払い命令を出し、その後、債務人が法定期間内に異議を表明していないことを確認した後、直ちに銀行に確定証明書を発行、交付した。銀行は請求権の時効は既に保全されていると考え、すぐには債務人に対し強制執行を申し立てず、数年後に債務人の財産所在地を調べ出した際に、はじめて当該支払い命令及びその確定証明書に基づいて裁判所に強制執行を申し立てた。ところが、このとき債務人は、当該支払い命令がこれまで合法的に、即ち、発行後3ヶ月以内に債務人に送達されていないため失効していると抗弁し、裁判所はこれが事実であることを確かめた後、当該確定証明書を取り消した。銀行は当該取消通知を受領した後、別に改めて訴えを提起し、当該債務人に返還を請求するつもりだが、おそらく債務人は銀行の請求権は既に時効にかかっていると抗弁してくるだろう。この場合、銀行は、どのように処理すべきであろうか? |
【新たに改正された民事訴訟法】 |
「民事訴訟法」は2009年1月21日に最新の改正が可決され、上記の実務上かつて発生した支払い命令につき確定証明書が誤って発行された問題を解決した。 |
「民事訴訟法」の規定により、仮に債務人が裁判所の発行した支払い命令につき法定期間内に異議を表明していなければ、当該支払い命令は直ちに確定し、確定判決と同一の効力を生じ、債権人はこれをもって執行名義とすることができる。しかし、過去の実務においては、偶に、支払い命令が実際には合法的に債務人に送達されていないのに、裁判所が誤って確定証明書を発行した事例が見られた。仮に当該確定証明書がその後、債務人の抗弁を経て取り消された場合も、もとより債権人は、再度、支払い命令を出すよう申立てる、又は訴えを提起して権利を主張することができるが、少数の案件においては、その請求権が既に時効にかかっている可能性があり、改正前の「民事訴訟法」には、この種の情況についての解決方法が規定されていなかった。 |
「民事訴訟法」の今回の改正では、特に第515条に第2項の規定が追加され、確定証明書が誤って発行されたことを裁判所が発見し、かつ、確定証明書に記載されている確定日から5年以内に当該確定証明書を取り消した場合は、債権人に通知する義務を負い、債権人は通知受領後20日の不変期間内に訴えを提起しさえすれば、裁判所に支払い命令を出すよう申し立てた時点から既に訴えを提起していたものと見なすと規定された。 |
【本案の解決方法】 |
例示案件においては、支払い命令の確定証明書が裁判所によって取り消されたものの、銀行は取消し通知受領後20日以内に訴えを提起して債務人に貸出金の返還を請求しさえすれば、その請求権につき、当該請求権が既に時効にかかっているという問題は生じない。 |