ニューズレター
秘密保持命令実務の現状
知的財産訴訟の双方の当事者は往々にして関連市場における競争者であり、当該当事者が訴訟手続中に提出又は開示した資料又は証拠物は当該当事者又は第三者の営業秘密に関わる可能性がある。関連当事者と第三者、双方の利益に配慮すべく、2008年7月1日に施行された「智慧財産案件審理法」(「知的財産案件審理法」)では、日本法の規定を参酌して秘密保持命令メカニズムが導入された。当事者又は第三者は知的財産権案件につき、法により、秘密保持命令を下すよう裁判所に申し立てることができ、故意に秘密保持命令に違背した場合、3年以下の懲役という刑事責任に及ぶことになる。 |
秘密保持命令のメカニズムは日本法の規定を参酌しているが、日本ではこれまでにまだ1件も申立てがなく、案例がない。業者が最も憂慮しているのは、競争相手が秘密保持命令の刑事責任を手段に、裁判所に対し秘密保持命令許可申立てをむやみに行い、知的財産権利者の権利行使を妨害する可能性が極めて高い点である。 |
しかしながら、秘密保持命令許可申立て案件は予期していたほど多くはなく、導入後のこの1年間、裁判所が受理した申立て案はわずかな個別案のみであり、且つ、関連当事者又は第三者が協議を経て秘密保持命令に同意した場合を除き、裁判所は厳格な許可基準を採用しているため、業者が憂慮していた秘密保持命令許可の乱用といった問題は存在しないようである。 |