ニューズレター
両岸の金融、証券・先物取引、保険の「往来弁法」の公布・施行
行政院は2010年3月12日に、両岸(即ち、台湾と中国。以下同)の金融、証券・先物取引、保険等、3項目の業務の「往来及投資許可管理弁法」(「取引及び投資許可管理規則」)草案を承認し、行政院「金融監督管理委員会」(「金融管理監督委員会」。英語名はFinancial Supervisory Commission、以下「FSC」)はこれを同3月16日に公布、施行した。ただし、「両岸金融業務往来及投資許可管理許可弁法」(「両岸の金融業務取引及び投資許可管理許可規則」)における、中国の銀行が台湾の金融機関に対する株式投資に参加する場合の管理規定に関しては、両岸の関連経済協力協議の協議進展状況により、FSCが改めて施行日を定める。3項目の業務の「往来及投資許可管理弁法」草案の重点は、次のとおりである。 |
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一. |
「両岸金融往来弁法」の改正重点 |
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(一) |
両岸の銀行業者が相互に支店等の機関を設置する及び株式投資に参加する場合の管理規定を新たに設ける |
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1. |
台湾の銀行、金融持株会社 |
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(1) |
中国に支店等の機関を設置する/株式投資に参加する方式 |
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(a) |
台湾の銀行(海外の銀行業務子会社を含む)は中国に代表人事務所、支店、銀行業務子会社を設置する及び株式投資に参加することができ、並びに、支店、銀行業務子会社及び株式投資参加等の3種類の方式中、2種類を選択して中国で業務を行うことができる。 |
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(b) |
台湾の親銀行及びその海外の銀行業務子会社、又は金融持株会社の台湾の業務子会社と海外の業務子会社は、二者択一で中国市場に進出することができる。 |
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(c) |
銀行、金融持株会社による中国の金融機関への株式投資参加は、1社に限定する。 |
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(2) |
中国に支店等の機関を設置する/株式投資に参加する資格要件 |
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台湾の銀行が中国で営業拠点を設立する及び株式投資に参加する場合、法規遵守及び財務比率に係る規定に合致しなければならないほか、OECD加盟国で支店等の機関を設置し、業務を行った実績がなければならない。このほか、金融持株会社による中国の金融機関への株式投資参加は、そのグループの適正資本比率が110%以上に達しなければならず、ダブル・レバレッジ比率は115%を超えてはならない。 |
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(3) |
リスク・マネジメント |
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(a) |
台湾からの送金の制御:台湾の銀行が中国で支店、銀行業務子会社を設立する、又は株式投資に参加する場合、その累積指撥的営業資金及び投資総額合計は、銀行の純資産の15%を超えてはならず、金融持株会社が中国で株式投資に参加する場合、その投資総額はその純資産の10%を超えてはならない。 |
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(b) |
融資資金の供給源は主として中国で確保:台湾の銀行の中国支店が融資業務に従事する際の資金は、中国で現地調達される(預金及びコール取引)被率が50%よりも高くなければならない。 |
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2. |
中国資本の銀行 |
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(1) |
台湾に支店等の機関を設置する/株式投資に参加する方式 |
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中国の銀行(海外の中国資本の銀行を含む)は台湾に代表人事務所、支店を設置する及び株式投資に参加することができるが、支店及び株式投資参加のうちいずれか1つしか選択することができず、かつ1行に限定する。 |
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中国の銀行及びその海外の銀行業務子会社は、いずれか1行のみ台湾に進出することができる。株式投資に参加する場合、その投資対象は、両岸の関連する経済協力協議で別途取決めのある場合を除き、銀行、金融持株会社に限定するものとする。 |
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(2) |
台湾に支店等の機関を設置する/株式投資に参加する資格要件 |
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中国の銀行が台湾に進出する場合も、法規遵守及び財務比率に係る規定に合致しなければならず、並びにOECD加盟国で支店等の機関を設置し、業務を行った実績がなければならず、かつ、資産又は世界銀行ランキングに係る規定に合致しなければならない。また、支店開設を申請する場合には、さらに、国内に代表人事務所を設立してから2年以上経過していなければならないが、両岸の関連する経済協力協議に別途取決めのある場合には、その取決めに従うことができる。 |
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(3) |
リスク・マネジメント |
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(a) |
業務範囲の制限:中国の銀行の台湾支店の業務範囲はFSCの承認を受けなければならず、一口150万台湾元以上の定期預金のみ受けることができる。 |
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(b) |
財務条件に係る要件:中国の銀行の台湾支店はFSCが定める流動性及び資金源などに係る財務規定に合致しなければならず、かつ、支店の純資産は運営資金の2/3未満であってはならず、不足している場合、FSCは期限を定めてそれを補足するよう命じなければならない。 |
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(二) |
国際金融業務を取り扱う支店に対して、中国における台湾企業の与信業務に対する制限を緩和 |
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台湾の銀行が第三地区に設立した支店等の機関及び国際金融業務を取り扱う支店が与信業務を行う場合、当該業務を提供する対象は、「台湾地区與大陸地区人民関係條例(台湾地域と大陸地域の人民関係に係る条例)」第35条第1項の規定により投資許可を受けた者(即ち「中国の台湾企業」)及び第三地区法人の中国における支社及び発行済み株式総数又は資本総額の50%以上を保有する子会社に限定される。第三地区法人には、中国の人民、法人、団体及びその他の機関が第三地区で設立した法人は含まれない。 |
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(三) |
台湾の金融機関が両岸のクレジットカード、デビットカード業務を取り扱えるよう、取引の範囲を拡大 |
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台湾の金融機関はFSCの許可を受けて、中国でクレジットカード、デビットカードの機関を跨る情報交換及び資金決済業務を行う機関と、クレジットカード又はデビットカードの業務取引を行うことができ、その範囲には商品・サービス購入時のカード払いの代金回収業務、取引に関するライセンスの提供及び決済サービス、並びにその他のFSCの許可を受けて行う業務が含まれる。 |
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二. |
「証券期貨(証券・先物取引)往来弁法」の改正重点 |
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(一) |
台湾の証券・先物取引会社 |
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1. |
中国に支店等の機関を設置する/株式投資に参加する方式 |
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証券会社、証券投資信託会社、先物取引会社は、中国で事務所を設置する及び株式投資に参加することができる(開放を認めている枠組を維持)。 |
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2. |
リスク・マネジメント |
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証券・先物取引会社が中国で株式投資に参加する場合、その投資総額は会社の純資産の40%を超えてはならない。 |
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(二) |
中国資本の証券・先物取引会社 |
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1. |
台湾に支店等の機関を設置する/株式投資に参加する方式 |
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(1) |
中国の証券・先物取引会社(海外の中国資本の証券・先物取引会社を含む)は台湾で事務所を設置する及び台湾の証券・先物取引会社に対する株式投資に参加することができる。事務所を設立する及び株式投資に参加するのは、1社に限定する。 |
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(2) |
中国資本の証券・先物取引会社及びその海外子会社は、いずれか1社のみ台湾に進出することができる。 |
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(3) |
中国資本の証券・先物取引会社が台湾の証券・先物取引会社に対する株式投資に参加する場合、個々の中国資本の証券・先物取引会社による単一の台湾の上場(店頭公開)証券・先物取引会社に対する累計投資金額は、当該証券・先物取引会社の発行済み議決権付株式総数又は資本総額の5%を超えてはならず、また、全ての中国資本の証券・先物取引会社による単一の台湾の上場(店頭公開)証券・先物取引会社に対する累計投資金額は、当該証券・先物取引会社の発行済み議決権付株式総数又は資本総額の10%を超えてはならない。前記5%及び10%の上限は、もし株式投資対象が台湾の非上場(非店頭公開)証券・先物取引会社である場合、10%及び15%に引き上げる。 |
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2. |
台湾に支店等の機関を設置する/株式投資に参加する資格要件 |
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中国資本の証券・先物取引会社が台湾に進出する場合、法規遵守及び財務健全に係る規定に合致しなければならないほか、海外で支店等の機関を設置した実績がなければならない。 |
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三. |
「保険往来弁法」の改正重点 |
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(一) |
台湾の保険補助業者が中国で支店等の機関を設置する、中国の保険会社に対する株式投資に参加する場合の管理規定を新たに設ける |
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1. |
中国に支店等の機関を設置する/株式投資に参加する方式 |
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保険代理人、ブローカー及び公証人は中国に代表人事務所、支社、子会社を設置する及び中国の保険会社に対する株式投資に参加することができる。 |
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2. |
リスク・マネジメント |
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保険会社が中国で支社、子会社を設置する又は株式投資に参加する場合、その累積の積立営業資金及び投資総額は、会社のオーナー権益の40%を超えてはならない。 |
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(二) |
中国の保険会社が台湾で事務所を設置する及び株式投資に参加する場合の管理規定を新たに設ける |
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1. |
台湾に支店等の機関を設置する/株式投資に参加する方式 |
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(1) |
中国の保険会社(海外の中国資本保険会社を含む)は台湾に事務所を設置する及び台湾の保険会社に対する株式投資に参加することができる。事務所を設置する及び株式投資に参加するのは、1社に限定するものとする。 |
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(2) |
中国資本の保険会社及びその海外子会社は、いずれか1社のみ台湾に進出することができる。 |
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(3) |
中国資本の保険会社が台湾の保険会社に対する株式投資に参加する場合、個々の中国資本の保険会社による単一の台湾の上場(店頭公開)保険会社に対する累計投資金額は、当該保険会社の発行済み議決権付株式総数又は資本総額の5%を超えてはならず、また、全ての中国資本の保険会社による単一の台湾の上場(店頭公開)保険会社に対する累計投資金額は、当該保険会社の発行済み議決権付株式総数又は資本総額の10%を超えてはならない。前記5%及び10%の上限は、もし株式投資対象が台湾の非上場(非店頭公開)保険会社である場合、10%及び15%に引き上げる。 |
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2. |
台湾に支店等の機関を設置する/株式投資に参加する資格要件 |
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中国資本の保険会社が台湾に進出する場合、法規遵守及び財務健全に係る規定に合致しなければならないほか、一定の信用評価基準を満たしている必要がある。 |
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四. |
中国資本金融機関の株式投資参加に対する管理 |
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(一) |
中国資本の銀行 |
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個別の中国の銀行による単一の銀行、金融持株会社に対する累計投資金額は、当該銀行又は金融持株会社の発行済み議決権付株式総数又は資本総額の5%を超えてはならず、中国の投資家(適格国内機関投資家(QDII)を含む)の投資金額を加えた場合、10%を超えてはならない。 |
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(二) |
中国資本の証券・先物取引会社及び保険会社 |
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個別及び全ての中国資本の証券・先物取引会社、保険会社が、台湾の単一の上場(店頭公開)証券・先物取引会社、保険会社に対する株式投資に参加する場合の持株比率の上限はそれぞれ5%及び10%であり、台湾の単一の非上場(非店頭公開)証券・先物取引会社、保険会社に対する株式投資に参加する場合の持株比率の上限はそれぞれ10%及び15%である。ただし、両岸の関連する経済協力協議により、台湾の生命保険会社による中国の生命保険会社に対する株式投資の持株比率が50%を超えることが許容されている場合、FSCは特別に前記株式投資比率を承認することができる。 |
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(三) |
中国資本の金融機関が台湾の金融機関の取締役に就任する場合の制限 |
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中国の金融機関が投資先である台湾の金融機関に中国籍の者を派遣して取締役に就任させる場合、まずFSCに報告してその許可を受けなければならない。 |