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特許侵害訴訟における専利有効性審理時の知的財産裁判所の心証開示義務



台湾では、200871日に正式に知的財産裁判所が成立し、同日、「知的財産案件審理法」(「智慧財産案件審理法」)の施行が開始され、し、台湾の専利訴訟制度は新たなステージに足を踏み出した。最も大きな変革の1つは、当事者が権利侵害訴訟において専利権の無効を主張する場合、裁判所は自ら判断を下さなければならず、智慧財産局が専利無効審判手続きについて決定を作成するのを待つ必要はなく、また、裁判所は無効審判請求案の存在を理由に訴訟手続きを停止することはできない、という点である。智慧財産局が依然として専利主務官庁であることを考慮し、「知的財産案件審理法」には、「裁判所は必要があれば、訴訟に参加して専利の有効性に係る争点について意見を述べるよう、智慧財産局に命じることができる」と規定されている。このほか、裁判官が技術争点について調査及び判断を行うのをサポートするため、知的財産裁判所には技術審査官が配置されており、現在は主に、智慧財産局から専利審査官が出向し、その任に就いている。前述の各関連措置及び知的財産裁判官の専門分野での素養と経験の蓄積により、知的財産裁判所が成立してから3年、専利権侵害訴訟の効率及び品質は目覚ましい向上と進歩を遂げている。

しかし、知的財産裁判所は権利侵害訴訟において専利無効を宣告する比率が高いようであり、且つ審理の進行速度も比較的早いことから、裁判所は技術審査官に頼りすぎているのではないかという疑念が外部に生じている。このほか、智慧財産局が無効審判請求案につき既に「無効審判請求不成立」の審決を下している案件に対しても、知的財産裁判所は権利侵害訴訟においてかなりの比率で専利無効を宣告し、智慧財産局の意見と食い違う結果となっていることも、当事者に判決結果に対して疑念を抱かせる要因となっている。したがって、どのように、訴訟手続きにおいて当事者の権益の保障や予期せぬ判決の回避に留意し、且つ審理の効率にも配慮すると同時に、判決結果の正確さを追求し、当事者の判決結果に対する信頼を高めていくのかが、専利権侵害訴訟の新制度下において極めて重要な課題となっている。

この課題について、最高裁判所は既にいくつかの判決において次のように判示している。

    

まず、2009910日に作成した98年(西暦2009年)度台上字第1655号判決において、最高裁判所は「知的財産案件審理法」第8条の「裁判所が既に知っている特別な専門知識は、当事者に弁論の機会を与えなければ、判決の基礎として採用することができない。裁判長又は命令を受けた裁判官は、事件の法律関係について、当事者によく説明しなければならず、並びに適時その法律上の見解を表明することができ且つ適度に心証を開示することができる」旨の規定を指し示して、「係争専利が進歩性を具えるか否かは依然として行政訴訟審理機関による最終的な認定を待ち、もし、裁判所が関連する技術問題及び既に知っている特別な専門知識について当事者に論告並びに心証を適度に開示せず、当事者に弁論の機会を与えないのであれば、当事者の聴聞審理の機会を剥奪し、且つ事実認定の唐突さをもたらす可能性がある」と強調している。

    

その後、最高裁判所は、20091216日に作成した98年(西暦2009年)度台上字第2373号判決において、次のように、さらに一歩踏み込んだ見解を示している。「『知的財産案件審理法』の智慧財産局に訴訟参加を命じることができる旨の規定は、知的財産権の有効性は知的財産主務官庁の職権と関係があるため、裁判所がより周到な訴訟資料を入手して正確な判断を下すことができるよう、並びにできる限り主務官庁の判断と食い違いが生じることのないようにするためのものである。したがって、主務官庁に手続きに参加させ並びに意見を表明させる機会を与える必要があり、この手続きは技術審査官が訴訟に参加していることを理由に疎かにできるものではない。特に、智慧財産局が既に無効審判請求不成立の審決を下しているとき、もし裁判所がその判断を覆そうとするのであれば、なおさら、情況を斟酌して、智慧財産局に訴訟に参加するよう命じなければならない。さもなくば、あらゆる手段を講じて調査し尽くしたとは言えず、とうてい人を信服させることはできない」。このほか、最高裁判所はこの判決において、「技術審査官は決して鑑定人でも証人でもなく、裁判官の補助者にしかすぎない」と指摘し、注意を喚起している。

    

2010121日に、最高裁判所は、99年(西暦2010年)度台上字第112号判決において、上記判決で述べた「技術審査官は裁判所の補助者にすぎない」という趣旨の主張を繰り返す以外に、「裁判所と智慧財産局の特別な専門分野の知識についての判断が異なるとき、智慧財産局に訴訟に参加するよう命じ、当該局の提出した意見を参酌し、証拠調査を行うのが望ましい」とする原則を再度述べている。

    

最高裁判所はまた、2011331日に、100年(西暦2011年)度台上字第480号判決を作成して、以下のような趣旨で詳しく説明している。「知的財産裁判所は、自らが具える専門知識又は技術審査官による意見陳述によって得た専門知識につき、もし主務官庁の判断と異なると認めるのであれば、自らが知悉する事件と関係のある特別な専門知識を当事者に適切に開示して当事者に弁論の機会を与え、若しくは適切な時期に適度にその法律上の見解を表明し並びに心証を開示し、若しくは知的財産主務官庁に訴訟に参加して意見を表明するよう命じる裁定を下さなければならず、双方が十分に攻防、口頭弁論を行った後、弁論で得た心証により職権で判決を下さなければならない」。

最高裁判所の上記各判決における判示をまとめると、知的財産裁判所が専利権侵害訴訟において専利有効性の争点につき審理する際に実行しなければならない重要な手続原則を導き出すことができる。即ち、知的財産裁判所が専利有効性の争点について智慧財産局と異なる見解を採用しようとするとき、まず当事者に心証を適度に開示することによって当事者に弁論の機会を与えなければならず、又は智慧財産局に訴訟に参加して意見を表明するよう命じる裁定を下さなければならず、このようにすることによって、手続きだけでなく、実体審理における当事者の権益を確保することができる。

最高裁判所は既に判決のなかで前述の手続原則について繰り返し説明しており、知的財産裁判所がこれをどのように実践していくのか、見守っていきたい。

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