ニューズレター
牛乳メーカー大手3社による価格カルテルを公平会が処罰
国内の牛乳価格が値上がりした件について、行政院公平交易委員会(※日本の公正取引委員会に相当。以下「公平会」)は自発的に立件するとともに、職権で調査を行い、2011年10月19日の委員会議で、国内三大牛乳メーカーである味全食品工業(以下「味全」)、統一企業(以下「統一」)及び光泉牧場(以下「光泉」)は、2011年10月に連合して牛乳価格を引き上げ、「公平交易法」(※ 日本の「不正競争防止法」、「独占禁止法」の要素が含まれる)第14条第1項の連合行為の禁止規定に違反したと認定し、味全に1,200万元(新台湾元、以下同)、統一に1,000万元、光泉に800万元の罰金を科した。 |
公平会は、次のように指摘している。「3社の国内牛乳供給市場における市場占有率は80%に達しており、最近、生乳(原料乳)の仕入価格が1キログラムあたり1.9元値上がりし、製造コストが上昇したとはいうものの、3社が値上げした牛乳の希望小売価格は、いずれも同じで、生乳コストの上昇幅を上回っており、かつ、ブランド競争力のある製品は同一の価格帯を維持している。1リットル詰めを例にとると、味全の『林鳳營』(936ml)は77元から83元に、統一の『瑞穗』(930ml)と光泉の『乳香世家』(936ml)は76元から82元に調整されており、価格はいずれも6元の値上げとなっている。このほか、2リットル(1857ml)製品についても、味全は12元の値上げ、光泉と統一は11元の値上げで、ほぼ一致している。このことから、メーカーが主力商品の参考希望小売価格をほぼ横並びにしているだけでなく、その値上幅は生乳のコスト上昇分をはるかに超えていることが見てとれる」、「3社が値上げの際に考慮した要素がそれぞれ異なっているにもかかわらず、今回の牛乳価格値上幅には一致性が見られ、しかも、その点について、市場における客観的、合理的な要素に係る合理的な説明を提出することができない」 |
また、公平会は、過去の調査に関するファイルや証拠資料を慎重かつ周到に調査した結果として、次のように述べている。「今回、各社が出した希望小売価格の値上幅は一致度が高く、かつ、前回2007年に生乳仕入価格が上昇したときに比べて、牛乳の市場販売価格の引上幅は数倍も高いので、互いに価格競争しないという合意があったと考えなければ、合理的に説明することができない。例えば、1リットル詰め(936ml)は、いずれも6元の値上げで3社一致しており、生乳仕入価格上昇分の約2元については合理的な説明がつくものの、残りの4元分については、各メーカーの値上げ理由が異なっている以上、異なる調整要素に基づいて各社がそれぞれ計算した結果、全く同じ値上幅となることはありえず、かかる価格調整行為は業者間の意思連絡によるものであることが見てとれる。したがって、牛乳市場において80%もの市場占有率を有する3社が、今回、共同して販売価格を引き上げ、相互の価格競争を排除し、不当連合による利潤獲得を共謀したことは、明らかに消費者の利益を損なうものである」。 |
公平会はさらに一歩踏み込んで、次のように述べている。「当会は、連合行為という禁止規定に違反する行為の認定に際して、契約、協定などの直接証拠以外にも、間接証拠が経験則及び論理法則に合致するという推論判断を違法事実認定の基礎とする。本案において、3社は合理的な計算に基づくことなく連合して値上げをしており、かかる行為は業者間に価格カルテルがあった間接証拠とみなすことができる」。 |
公平会はかつて2007年にも、当該3社が同時に牛乳の販売価格を引き上げた行為が取引秩序に影響を及ぼすに足る、明らかに公平を失した行為であるとして、「公平交易法」第24条に基づいて当該3社を処罰したが、当該処分は、その後、行政院訴願審議委員会によって取り消された。同委員会が公平会の3社に対する今回の処分決定を支持するか否かが注目される。 |