ニューズレター
「2014年商標の使用に関するシンポジウム」におけるコンセンサス
智慧財産局は 「商標の使用」に関する規定の適用に対する外部からの疑義を整理して明確にするため、2014年4月8日に裁判官、弁護士及び教授等を招聘して「2014年商標の使用に関するシンポジウム」を開催し、「商標の使用」に関する問題について意見を求めた。当該問題については、十分な議論の末、多少のコンセンサスを得るに至った。
今回のシンポジウムにおけるコンセンサスは、智慧財産局、経済部訴願審議委員会又は裁判所に対し、法律的な拘束力をもたないが、出席者には智慧財産局の商標関連業務の主管及び商標審査官が含まれているため、智慧財産局の今後の商標関連案件審理に対し、必然的にかなりの影響を生じることになるであろう。他方、経済部訴願審議委員会又は裁判所も、今回のシンポジウムにおいてコンセンサスを得る過程で参酌された関連する実務見解、各国の立法例又はこれまでの各回法改正の改正理由を、今後の案件審理の参考とする可能性がある。
今回のシンポジウムにおける一部コンセンサスの要点は、以下のとおりである。
1. 商標法第5条の「販売を目的として」の意義及び範囲
商標法第5条が規範する「商標の使用」におけるいわゆる「販売を目的として」という用語は、行為者の主観上、市場に向けて販売促進又はその商品/役務を販売することを指し、それはTRIPS 協定の条文における「取引過程」の文言が市場における客観的商業取引行為であることを指すこととは異なるが、商標法改正の過程において、各界から文言修正について好ましくないとの意見が寄せられたため、改正説明の欄に、「in the course of trade」の文言の意義に相当する、と明記するにとどまった。
商標法改正の過程において、出席者は、次のように認めている。「取引過程」は、営利意図のある取引行為又は取引流通を指し、有償、無償で区分されるものではなく、「販売を目的として」の判断は、商業活動の発展と時代とともにすすめるべきである。たとえば、現在の市場では極めて一般的な共生マーケティング(co-marketing)方式は、2つ若しくは2つ以上のブランド又は企業に関して、共同開発又は市場機会の利用について提携協力してマーケティングを行う概念であるが、これも盛り込んで、広義の解釈とすれば、市場からはずれたものとはならない。
商標法第 5 条の「商標の使用」規定の形式については、具体な事例を列挙する形式に改正されたため、各号に列記された商標の使用状況の一つの解釈が列挙規定となり、漏れが起こりうるという疑義を引き起こした。しかし、商標の使用の定義が「第一章 総則」に規定されており、「第四章 罰則」における刑事責任規定も適用されることに鑑みると、おそらく例示規定として解釈することはできない。但し、商標の使用の認定については、行為者が主観的に広義の販売目的に基づき、市場に向けその商品/役務を販売促進又は販売し、また客観的に各号の使用状況の総括的規定で補うことによって、実務上商標の使用行為を包括することができる。
2. ノベルティ行為が商標の権利維持の使用又は権利侵害の使用に該当するか否かの判断要件
商標の使用は、販売を目的として第5条第1項に列記された各号の使用状況のいずれかに該当するものであるほか、その使用が「消費者にそれが商標であると認識させるに足る」ものでなければならない。よって、権利維持の使用について判断する際には、商標権者はその登録商標の使用が真実であることを証明しなければならず、すなわち、消費者に当該「登録商標」が指定する商品又は役務が商標権者のものであると認識させることができなければならない。権利侵害の使用については、商標権者の同意を得ずに他人の登録商標を使用した者が、消費者にそれが指定する商品/役務の出所を示す商標について誤認・混同を引き起こす虞があるか否かで判断しなければならない。よって、ノべルティに表示された商標が、商標の使用に該当するか否かは、「ノべルティ」に出所を表示する商標機能があるか否かを見て判断しなければならない。
3. 「リバース・パッシングオフ」(※商標権者の同意を得ずに商品の商標を自己又は第三者の商標に貼り変え、自己又は第三者が製造した商品であるとして市場で販売する行為)は商標権侵害を構成しない
リバース・パッシングオフの事例におけるマークの抹消又は他人の商標への置換えなどの状況は、商標法第 5 条の各号に規定されている使用の状況の適用範囲には属さず、また、商品上に他人の商標を附して権利消尽を主張する問題とも無関係である。中華民国外の実務では、商標法に明文で規定されている権利侵害構成要件を有する場合を除き、多くが不正競争に関する法規で処理されている。中華民国の商標法に明文規定が置かれていない以上、「リバース・パッシングオフ」案件は、「公平交易法」(※日本の不正競争防止法、独占禁止法に相当)の処理範囲とすべきである。智慧財産局は「公平交易委員会」(※日本の公正取引委員会に相当)と、適用状況について連絡をとりながら、不正競争行為の規範に漏れが生じないよう対応していくべきである。