ニューズレター
拡大型日台特許審査ハイウェイ(PPH MOTTAINAI)が3年間試行
台湾と日本の間でこれまで2年間実施されてきた日台特許審査ハイウェイ(PPH)試行プログラムが修正され、2014年5月1日から拡大型特許審査ハイウェイ(PPH MOTTAINAI)試行プログラムとして3年間実施される。「MOTTAINAI」とは、文字どおり日本語の「もったいない」に由来している。
一般の「PPH」プログラムの申請要件によれば、下図に示すとおり、第1庁(出願人が最先に特許出願をした庁)で出された有利な審査結果は、第2庁(第1庁以外に特許出願をした庁)で参考にされるが、第2庁で先に審査結果が出された場合、第1庁はその審査結果を参考にすることができない。
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(注:図中の矢印は、いずれかの庁の有利な審査結果に基づいて、矢印の先のもう一方の庁にPPHを申請することを表している)
上記のとおり、一般のPPHでは、第2庁の審査結果を利用することができないというまさに「もったいない」状況があったが、その制限が緩和された拡大型「PPH」である「PPH MOTTAINAI」の実施により、先に出された審査結果を十分に利用することができるようになる。
以下に例を挙げて説明する。「PPH MOTTAINAI」の実施後、例えば台湾の出願人が台湾で先に特許出願をした後に、同一の発明について日本で特許出願をして優先権を主張した場合、日本の特許庁が先に有利な審査結果を出せば、出願人はその審査結果に基づいて台湾の智慧財産局(日本の特許庁に相当)に「PPH MOTTAINAI」を申請することができるようになった。このような申請は一般の「PPH」では受理されることはない。
下図Case 1のとおり、「PPH MOTTAINAI」では、第1庁と第2庁との間で、先に出された有利な審査結果を相互に利用することができるようになったが、そればかりでなく、下図Case 2のように、A庁、B庁のいずれもが第1庁ではない場合も、双方が「PPH MOTTAINAI」を締結しており、A庁への出願とB庁への出願が同一の最先の優先日を主張していれば、一方の庁で先に出された有利な審査結果を、他方の庁で利用することができる。さらには、下図Case 3のように、A庁、B庁及びC庁との間で「PPH MOTTAINAI」が締結されており、かつ、それぞれの出願の最先の優先日が同一である場合にも、先に出された有利な審査結果を、他の二つの庁で利用することができる。
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さらに拡大していくと、多国間で「PPH MOTTAINAI」が締結されていれば、いずれかの国で先に出された有利な審査結果を他の全ての国がより有効に利用しやすくなる。
現在、台湾は日本以外にも、スペインとの間で、2013年10月1日から2年間の「PPH MOTTAINAI」試行プログラムを実施しており、米国との間では、一般の「PPH」プログラムが2012年9月1日から既に正式に実施されている。台湾で特許審査ハイウェイを利用できる範囲は、まだまだ限られているが、以前よりも格段に、かつ、有効に利用しやすくなり、これは特許出願人に大いに資するものである。