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誰が「真の発明者」であるのか?



専利の出願は、専利出願権を有する者がこれを行わなければならない。台湾「専利法」第5条第2項の規定によれば、専利出願権者とは、原則として、発明者、実用新案の考案者、設計者又はその譲受人や相続人のみを指す。発明、考案又は設計などの行為はいずれも事実行為に属すため、専利につき、他人が発明者、考案者又は設計者(便宜上、以下「発明者」とする)として名前を騙って出願を提出するとき、真の発明者をいかに認定すべきか、裁判所は個々の事案ごとの事実により判断する必要がある。
知的財産裁判所の発明者認定に関する最近の判決を見ると、「実質的に同じ又は類似」という判断基準を採用する傾向にあることがわかる。即ち、真の発明者であるとする主張につき提出した証拠資料に明示される発明内容と、係争特許の特許請求の範囲について比較を行い、もし当該発明内容と係争特許の特許請求の範囲が「実質的に同じ又は類似」であれば、当該証拠を提出した者が真の発明者であると認める。
l   101年(西暦2012年)度民専上字第2号判決(判決日:2013411日)
甲社の主張は次のとおり。係争の器材は甲社従業員が研究開発したものであるが、甲社が川下のOEM業者に製造価格を問い合わせた際、係争器材の最初の構図が流出した。その結果、乙が係争器材の技術内容を知悉し、乙の名前で係争専利を出願した。甲社は乙を被告として知的財産裁判所に訴えを提起し、甲社が係争専利の出願権者であることを確認するよう申立てた。
知的財産裁判所は判決で、著作権剽窃紛争で依拠とする判断基準を引用し、本件について判断を行った。かかる判断基準には、(1)権利侵害疑義物と著作物との間で「実質的な類似又は同一」を構成するか否か、(2)被告が著作物に「接触した」事実があるか否か、などが含まれる。
まず、知的財産裁判所は、係争専利の請求項と係争器材の技術内容を比較した後、「両者には若干の微小な差異があるものの、その差異は依然として当該技術の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に想到できるものである。ゆえに、全体について言えば(オールエレメントルールの比較に基づいて)、両者は実質的な類似又は同一を構成している」と認めた。
次に、乙がかつて考案の略図に接触した事実があるかどうかについて、甲社は数件の電子メールを証拠として提出したが、上記文書はいずれも、乙が送信又は受信したものではないとする乙の抗弁を受けて、その真偽を判断することができず、且つ、乙は、「関連証拠物はいずれも、乙が確かにかつて係争器材の技術内容を最終的に入手し、さらには係争専利を出願したことを証明することができない」と主張した。
これに対し、知的財産裁判所は、「専利出願権者が誰かという問題は通常の民事紛争事件に属し、証拠の証明力についての要件は当然『証拠の優越度』である。言い換えると、本件紛争において双方いずれの主張を採用するかは、当然、それぞれが提出した証拠のいずれがより優越しているかを以て判断する」と述べた。言い換えると、「接触」の事実の有無を証明するのが極めて困難であるとき、証拠優越の法理に基づいて、裁判所は「接触の可能性の有無」を認定依拠として採用する。即ち、客観的証拠によって乙が接触した「可能性」を十分に証明することができ、乙も反証を挙げることができない場合、甲社の主張が事実であると認めなければならない。
知的財産裁判所は最終的に、乙が考案の略図に接触した可能性が高いこと、且つ、係争専利の技術特徵が係争器材と実質的に類似していることを以て、専利権は甲社に帰属すると認める判決を下した。
l   102年(西暦2013年)度民専上字第9号判決(判決日:2014515日)
A社は訴えを提起して次のように主張した。係争特許は当該会社従業員X2001年に完成した発明であり、特許権者B社の工場長Yも当時A社の従業員で、この発明に関連する研究開発及び実験に関与していた。しかし、Y2004年に離職後、2006年にB社を設立し、並びに関連発明を特許出願した。A社は、Yが発明者の名義を不正に使用して係争特許を出願したと主張するとともに、YがまだA社に在籍していたときに、Xと作成した実験記録簿などの資料を証拠として提出した。
知的財産裁判所は、上記実験記録簿の内容を審査した際、それが係争特許と関連することは認めたものの、係争特許の技術特徴は既に当該実験記録簿に開示されているとするA社の主張については、「係争特許の特許出願の範囲が証拠に開示されている創作と同一であるか否かの判断は、一部の技術内容についてのみ比較を行うのではなく、特許出願の範囲の技術内容全体と比較を行わなければならない」と述べている。A社が提出した実験記録簿には係争特許の配合全体を完全に記載した箇所は1つもなく、それが記載している配合組成も係争特許の技術特徵に示されている配合組成及び成分と異なるため、両者の技術内容は実質的に同一ではなく、ゆえにA社の主張は棄却された。
知的財産裁判所は判決のなかで、「実質的に同一」の認定について、特に次のように説明している。「いわゆる実質的に同一であるとは、発明又は実用新案においては、係争専利の専利出願の範囲に記載されている技術が証拠に開示されている技術と実質的な差異がなく、係争専利の専利出願の範囲に記載されている技術が証拠の創作コンセプト、技術手段及び効果から逸脱してさえいなければそれでよく、両者の単語や文章及び図面形式が同じである必要はない。したがって、係争専利権を上訴人が有するか否かの判断は、係争専利の専利出願の範囲と上訴人の実験作業記録簿に示されている関連創作内容を比較しなければならない」。
知的財産裁判所はA社が係争特許の真の権利者であると認めてはいないものの、その判決結果は依然としてB社に不利である。B社の特許権および特許出願権の不存在確認を求めたA社の予備的主張に照らし、B社は発明実験プロセスを提出して自らが確かに係争特許の出願権者であることを証明することができず(B社は、関連資料は会社及び専利事務所がいずれも移転したため、探し出すことができない、と主張している)、且つ係争特許に記載されている発明者の1人であるYの証言も係争特許の技術特徴と矛盾するところがあるため、知的財産裁判所は、B社の係争特許についての出願権及び特許権はいずれも存在しないことを確認する判決を下した。
最終的に、争っていた双方ともに係争特許の出願権者ではないと判示された。
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