ニューズレター
技術移転契約における「特許権取得保証」及び「適用可能性保証」条項の解釈と適用をめぐる紛争事例
技術移転は産官学界でよく見られる連携モデルであるが、権利の瑕疵(欠陥)、物の瑕疵、保証条項などの契約違反の問題を引き起こすことが多い。台湾新竹地方裁判所107年(西暦2018年)度智字第7号判決(以下「一審判決」という)や、その上級審である知的財産及び商業裁判所110年(西暦2021年)度民専上字第5号民事判決(以下「二審判決」という)は、その代表的な事例判決である。
本件では、技術提供者(A社)と技術受領者(B社)が技術移転契約を締結し、その後、新たな技術移転契約を締結した。新たな技術移転契約において、双方は「契約の目的物(対象)である特許出願に係る発明が出願当初の範囲に従って特許査定を受けることができることを保証すること」(以下「特許権取得保証」という)、「契約の目的物の適用可能性を保証すること」(以下「適用可能性保証」という)などの条項に合意し、同時に、原技術移転契約を無効とすることに合意した。その後、B社は、A社の上記条項違反は物の瑕疵に当たると主張し、技術移転契約の解除と損害賠償を求めて訴訟を提起した。一審判決はB社敗訴、二審判決もA社は上記条項に違反していないとしてB社の控訴を棄却した。
詳細には、B社は、係争技術移転の目的物の米国特許出願権を取得した後、米国特許商標庁から、係争技術移転の目的物とその親特許との間に二重特許(double patenting,D.P.)の状態があると判断する審査意見通知(OA)を受け、その結果、最終的に特許査定された係争技術移転の目的物の米国特許の特許請求の範囲が限定されたため、A社は、「出願当初の範囲に従って特許査定を受けることができることを保証する」条項に違反したと主張した。
しかし、裁判所は以下のような見解を示した。米国特許審査手続便覧(Manual of Patent Examining Procedure,MPEP)には2種類の二重特許があり、1つは、特許の重複付与を防止することを目的とした、米国特許法第101条(35USC§101)に基づく同一発明型の二重特許(same invention type D.P.)であり、もう1つは、先願と後願で主張されたクレームの範囲間に特許性の区別可能性が欠如することを禁止する自明型の二重特許(obviousness-type D.P.)である。本件に存在する二重特許について、請求項の技術的特徴に相違点があり、同一発明型の二重特許ではなく、特許性の区別可能性が欠如しているという懸念があった。このとき、B社は、係争技術移転の目的物の請求項の特許性が親出願の請求項の特許性と異なることを意見申立書で示すことができるが、B社は、技術移転の目的物の請求項の範囲の補正、限定的減縮を行うことを決定し、ターミナルディスクレーマ(terminal disclaimer;特許存続期間の末期放棄宣誓)の答弁書を提出したため、最終的にB社に付与された特許の範囲が元の出願のそれよりも狭かった。これはB社自身の行為に起因するものであり、A社から納入された技術が物の瑕疵に当たるとは認められない。
B社はまた、係争技術移転の目的物に従って製造されたサンプルの性能は不十分であり、一般市場水準に達しておらず、商業的価値はなく、これは「適用可能性保証」条項違反であると主張した。
しかし、裁判所は、A社は原技術移転契約締結前に外部の会社から試験報告書を提出しており、その試験報告書は係争技術移転の目的物の性能は高水準であることを示しているとした。B社から提供された試験報告書については、自社の従業員が作成したものであり、その試験結果から、技術移転の目的物がすべての試験項目において市販品より劣っていたことを推認することはできなかった。したがって、A社から納入された技術が物の瑕疵に当たるとは認められないと結論づけた。
この事例からもわかるように、技術移転契約書を締結する際、前述の特許権取得保証や適用可能性保証という条項を定める必要がある場合には、契約書において保証の判断基準を明確に定めておくことで、契約条項の適用リスクを軽減することができる。