ニューズレター
台湾のコンピュータ・ソフトウェア関連発明審査基準の改定について
台湾の知的財産局(日本特許庁に相当)においては、コンピュータ・ソフトウェア関連発明審査基準の改定案につき、2007年12月から一連の公聴会を開くなど、各界の意見を取り入れ、最終的に、2008年5月20日付けの経智字第09720030721号経済部令として「特許審査基準第二篇発明特許実体審査第九章コンピュータ・ソフトウェア関連発明審査基準」が公告され、即日発効いたしました。審査中の出願及びこれからの出願は、この新たなコンピュータ・ソフトウェア関連発明審査基準(以下「新基準」と称します。)に基づいて審査されます。新基準は特許法及びその施行規則を基にし、加えて特許審査基準総則編中の一般規定、アメリカ及びヨーロッパでの特許審査ガイドライン、日本の特許審査基準等といった関連資料を参考にして制定されたものです。ご参考のため、以下のように主要な内容をまとめました。(新基準の中国語原文へのリンクは、こちら)
1.「コンピュータ・ソフトウェア関連発明の定義」という節が新しく加えられた
この節はコンピュータ・ソフトウェア関連発明の定義を提供するとともに、特許を受けようとする発明が発明の定義に合致するか否かの判定は、記載形式よりも実質的な内容を考慮し、それにより、従来技術に対する当該発明の全体の貢献が技術性を有するか否かを確認すべきであることが明記されています。新基準は特許審査基準の一般規定を根拠として適用し、発明の法的定義に基づいて、発明が適格であるか否か及びそのクレームが特許性を有するか否かが審査さるべきであると規定しています。
2.「発明に属さない類型」という節が再編された
新基準においては、発明に属さないものとして「自然法則自体」「単なる発見」「自然法則に反したもの」「自然法則を利用していないもの」及び「技術的思想を備えていないもの」という五つの類型が挙げられています。また、前記の「技術的思想を備えていないもの」は、「情報の単なる掲示」と「単なるコンピュータを用いた処理」を含みます。発明が信号又はプログラミング言語に書かれたコンピュータ・プログラムである場合、技術的思想を備えていない情報の単なる掲示と見なされます。
3.「ビジネス方法自体」は、「自然法則を利用していないもの」であることが明示される
ビジネス方法は社会法則、経験法則又は経済法則など人為的取決めであり、ビジネス方法自体の発明は発明の定義に合致していないことが明示されています。
4.「コンピュータ・プログラム・プロダクト」「データ構造プロダクト」及びそれに類似するものは、発明の対象と見なされることが明示される
コンピュータ・ソフトウェア関連発明の請求項は、一般的に方法の請求項と物の請求項とに分けられます。インターネットの普及に伴い、コンピュータ・ソフトウェアは記録媒体に記録できる他、記録媒体に記録され提供される形ではなく、インターネットにて直接伝送することによって提供することもできるので、コンピュータ・ソフトウェア関連発明は、コンピュータ・プログラム・プロダクトを請求の対象とする物の請求項を含む必要があります。したがって、一般の装置、システム、又はコンピュータにより読取可能な記録媒体に加えて、「コンピュータ・プログラム・プロダクト」、「データ構造プロダクト」及びそれに類似するものも適格な請求の対象として認められ、その実質的な技術的特徴により審査されることになります。
5.「手段機能用語(Mean-plus-function Clauses)」及び「ステップ機能用語(Step-plus-function Clauses)」という節が新しく加えられる
この節には、手段機能用語の使用及び技術特徴の判断基本原則が明記されます。基本的には、アメリカでの実務を参考にして制定されたものです。
6.「産業上の利用性」、「新規性」、及び「進歩性」という特許要件の節が拡充された
この節には、産業上の利用性と、発明の開示に基づいて実施可能とする要件(開示要件)とが区別されるとともに、機能的クレームの新規性の判断基本原則が明記されています。基本的には、アメリカの特許審査基準(MPEP)を参考にして制定されたものです。
ご質問、お気づきの点、ご要望などございましたら、お気軽に林(chlin@leeandli.com)までお問い合わせください。